こんにちは、TAKAです。
今回ご紹介する本は「人口80万人時代の青森を生きる 経済学者からのメッセージ」です。
出版は弘前大学出版会で、編集は弘前大学経済学部の教授陣です。
青森に実際に住んでいる教授方がどう生きるべきなのか、経済の視点から書かれたメッセージを素人なりに読み解き、簡単にご紹介したいと思います。
書籍情報
書籍名:人口80万人時代の青森を生きる 経済学者からのメッセージ
執筆陣:李永俊、飯島裕胤、黄考春、桑波田浩之、花田真一、大橋忠宏、山本康裕
発行所:弘前大学出版会
出版日:2019年10月11日
本の構成
序章:
第1章 人口80万人の青森経済と労働市場
第2章 人口減少時代の青森農業
第3章 グラビティ・モデルを用いたリンゴの輸出の推計
第4章 地方自治体による再生可能エネルギー政策
第5章 北東北・北海道の地域間交通の課題
第6章 金融技術革新と人口減少下の地方銀行
第7章 青森県マクロ経済は、非伝統的金融政策にいかに反応するか
概要
第1章 人口80万人の青森経済と労働市場
人口の減少は県のGDPを減少させるだけに留まらず、労働生産性の低下にも影響を及ぼしている。これが労働環境を悪化させ、若者がさらに流出する悪循環に陥ているのが現状である。
これを打開するためには「人口の再配置」が必要な旨が解かれている。
第2章 人口減少時代の青森農業
人口の低下は青森県の農業、リンゴ産業にも大きな影響を及ぼすことが予想される。
対策として高密植栽培の導入を提案し、農業の生産性向上について述べられている。
第3章 グラビティ・モデルを用いたリンゴの輸出の推計
国際経済分野で定着しているグラビティ・モデルを使用したリンゴの輸出推計。
輸出国のGDPが多いほど、距離が近いほど輸出額が増えることが予想されるため、今後成長が見込まれるアジア圏に青森リンゴをいかに売り込んでいくかという戦略を考える重要性について語られている。
第4章 地方自治体による再生可能エネルギー政策
今後需要が伸びると予想される再生可能エネルギーへの投資についての考察が書かれている。特に青森県は地熱資源が多いので、これを活用する案について述べられている。
第5章 北東北・北海道の地域間交通の課題
北海道新幹線開業に伴う交通ルートの変化と人口減少の影響を吟味し、将来の交通需要を見越した長期計画の必要性について語られる。
第6章 金融技術革新と人口減少下の地方銀行
従来の銀行は預金、保険、投資などフルラインナップ型の経営をしてきた。しかし、フィンテックや人口減少の影響で急速に力を失っている。
その為フルラインナップ型の経営を脱し、今後優位性を持つと予想される事業モデルも踏まえての議論が展開されている。
第7章 青森県マクロ経済は、非伝統的金融政策にいかに反応するか
20年に渡り行われてきた非伝統的金融政策(量的緩和政策)の影響を地方経済の視点から分析した珍しい研究。
他地域のデータも混じえながら、実は一様な効果ではなく地域ごとの特徴があることを述べている。
感想
個人的に興味をひかれたのは4章、5章です。
青森県のエネルギー政策については本ブログでご紹介させて頂いた「核燃マネー青森県からの報告」にもあるように原子力産業と密接な関係があります。その一方で六ケ所村の太陽光発電施設、下北半島、津軽半島には風力発電施設など再生可能エネルギーの開発も盛んです。4章は更に青森県に眠る地熱というエネルギー源についても言及していたのが面白かったです。
5章の地方銀行に関する話題ですが、SBI銀行をはじめとするネット銀行との提携、地銀同士の統合など再編が進んでいます。テクノロジーの発展で個人が銀行を介さずに金融サービスにアクセスできるようになった今、どのように地方銀行が生き残りをかけていくのかは地方の雇用という面でも関心の高い問題です。