地球の熱は温泉などの形で私たちの生活に恩恵をもたらしてくれます。
また近年では二酸化炭素を排出しない自然エネルギーとして注目されていますが、日本での開発はあまり進んでいません。
本記事ではこの開発が進んでいない理由、他国の先進事例、北国青森県で地熱資源を利用するメリットを交えて解説していきたいと思います。
地熱資源の開発が進まない理由
日本に存在する地熱資源は2347万kWと推定されており、世界第3位の規模を持ちます。一方2016年時点で開発されている地熱発電設備容量は53万kWと資源の2%ほどに留まています。
何故こんなに開発が進んでいないのか?大きく以下の二つの要因があると考えています。
・地熱資源が国立公園に位置する事
日本は世界第3位の地熱資源を有しますが、その8割が国立公園内に存在します。
国立公園内では建築物の高さに関する規制や自然景観や生物保護の観点から懸念の声が上がることがあります。
・開発までに長い時間と多額の資金がかかる事
地熱資源は地中1000~2000メートルに存在することから確実に採掘できる保証はありません。この為に事前の調査が必要であり、当然ながらそこには多くの費用と時間がかかります。調査した内の約3割程が開発のフェーズに進めると言われています。
また発電所を建設した費用を回収するにも約15年かかると言われています。
この様に地熱資源の開発には20年単位の時間がかかる事から営利企業だけでは開発が進みにくい実情があります。
地熱資源開発のメリット
地熱発電は導入の難易度は高いですが、導入後は以下のようなメリットは多くあると思われます。特に熱水の利用が見込まれる北国は地熱発電との相性が良いことが他地域の導入事例から分かってきています。
・気候に左右されない安定電源。
・温室効果ガス、有害ガスを発生させない。
・資源は山間部に位置し、地域経済に貢献可能。
・国内エネルギー自給率を上昇させ、安全保障にも効果。
・発電だけでなく熱水としての資源利用も可能。(冬季の融雪、温泉資源)
他国の先進事例、アイスランド:レイキャビク
地熱発電を積極的に活用している事例としてアイスランドがあります。
アイスランドは北大西洋にある島国でブルーラグーン、間欠泉などが有名です。アイスランドはこの温泉資源を観光だけでなく地熱発電所も多く参照したJOGMECのサイトによると4か所17基の地熱発電所があります。
この内の一か所ヘトリスヘイジ地熱発電所は外観が木目調、三角屋根のオシャレな外観で中ではお土産売り場や食事を楽しめる観光スポットにもなっているそうです。
地熱資源は国立公園など豊かな自然の中にあり、発電所を建設することで景観を壊すことが懸念点としてありますが、ヘトリスヘイジ地熱発電所のようにオシャレな自然に溶け込む外観にすることで観光スポットにするという発想は学ぶべき点なのではないでしょうか。
北国青森県での地熱資源利用
青森県ではオリックスが青森県風間浦村および青森市で2020年2月ごろまで地熱資源の採掘調査を行っていました。
オリックスは青森県風間村、青森市以外でも下風呂温泉地域や八甲田西部城ヶ倉地域での調査を行っています。
また中部電力、大林組、川崎重工、東日本旅客鉄道(JR東)、三井不動産など幅広い業界の企業が平成24年頃から地熱資源調査を行っています。
青森県の業者である城ヶ倉観光、嶽開発、弘前市なども上記の大手企業と組んで地熱資源の調査に加わっています。
青森県は冬の融雪対策として熱水利用の需要も一定量あると見込まれるため、地熱発電と相性が良い土地柄だと言えます。
一方でこれら地熱資源は青森県の魅力である国立公園などの自然の中にあります。開発を行う際はアイスランドのヘトリスヘイジ地熱発電所の様に建屋、観光地としての魅力をより高める形で開発するというのが対策になるのではないでしょうか。
青森県の地熱調査(参照:JOGMEC これまでの支援プロジェクト)
エリア | 業者 |
---|---|
下風呂地域 | オリックス |
むつ市燧岳地域 | 中部電力(株) (株)大林組 基礎地盤コンサルタンツ(株) 農業生産法人下北カンブリア農場(株) 青森県むつ市 |
八甲田西部城ヶ倉地域 | オリックス(株) (株)城ヶ倉観光 |
八甲田北西地域 | (株)大林組 川崎重工業(株) 東日本旅客鉄道(株) |
黒石市沖浦・青荷川地域地 | 三井不動産(株) デナジー(株) |
岩木山嶽地域地 | 中部電力(株) 嶽開発(株) 青森県弘前市 |
岩木山地域 | 基礎地盤コンサルタンツ(株) JENホールディングス(株) (株)大林組 川崎重工業(株) |
参照サイト
【Q&Aライブ:地熱 in アイスランド】再生可能エネルギー地熱の国アイスランドを巡ろう
青森県青森市八甲田北西地域における地熱資源開発調査事業に係る調査坑井(こうせい)掘削の開始について
ふらいはい ヘトリスヘイジ地熱発電所 アイスランド・フィンランド旅行記 その34 (2)
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また環境保全や核燃料という観点からもエネルギーをどう自給していくべきか興味を持っています。
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